岩前教授×オリナスが語る「住宅の断熱性能が変える健康と暮らし」

私たちの健康や快適な暮らしに大きな影響を与える住宅の断熱性能。2024年の省エネ性能ラベル表示義務化、2025年の省エネ基準適合義務化、さらに2030年のHEAT20 G1レベルへの基準引き上げなど、住宅性能に関する要求は年々高まっています。
今回は、住宅の温熱環境について長年研究されている近畿大学の岩前教授をお招きし、オリナス代表の上野山、進行役のコマツ氏とともに、これからの時代に求められる住まいづくりについて語っていただきました。

セッション参加者
岩前篤(近畿大学副学長 建築学部教授)
上野山喜之(三洋住宅株式会社 代表取締役)
コマツアキラ(日本人の健康をつくる住宅断熱リフォーム推進協議会 事務局長)

​家選びが変わる!省エネ性能ラベルで「見える化」

2024年4月1日よりスタートした、建築物の省エネ性能表示制度。中古・建売住宅の販売・賃貸時に、省エネ性能ラベルの表示が義務化されました。このラベルにより、住宅のエネルギー消費性能や断熱性能が一目でわかるようになります。

岩前教授「断熱性の高い家での暮らしは、健康に大きく寄与します。しかし、家づくりの際は、お客様自身のこだわり以外は軽視されがちなので、断熱については住宅会社が積極的にサポートしなければなりません。この性能表示ラベルは、住宅会社の考え方を可視化し、生活者の意識変容を促す良いきっかけになると考えています」

2025年4月には新築住宅に断熱等級4が義務付けられますが、これは最低限の基準にすぎません。より高度なHEAT20 G1・G2・G3が今後のスタンダードとなり、2030年にはG1レベルが義務化される予定です。

上野山「オリナスでは、全棟G2以上を標準としています。G1では近い将来陳腐化してしまうので、もっと先を行く家づくりをお客様におすすめしています」

住宅の断熱性能と健康の密接な関係

住宅性能の向上は、2050年のカーボンニュートラル実現と、住み手の健康という二つの重要な目的を持っています。

岩前教授「実際に断熱性の高い家に住むことで、様々な健康症状の改善や死亡率の低下が確認されています。家というのは長い時間過ごす場所なので、人体にさまざまな影響を与えるんです」

コマツ氏「住宅性能を高めることは、心身ともにストレスなく暮らすためには大切ですよね。しかし、新築住宅を検討する若い世代の方々は、現在の健康状態が良好なため、住宅内の温度差がもたらす影響を実感しにくいのかもしれません」

岩前教授「若い方だからこそ、仕事のパフォーマンスを向上させるためにも、質の高い睡眠が不可欠です。現代の都市生活では、騒音のために窓を開けて寝るのが難しいため、窓を閉めたまま快適に過ごせる環境を整えなければならないのです」

上野山「スカスカの家で暖かい環境をつくるのは難しいので、断熱性能だけでなく気密性能を上げることも重要です。その上で、24時間換気システムを活用して、新鮮な空気を取り込みます。最近は技術進歩により、熱交換効率90%と、換気によるエネルギーのロスもかなり減っています」

コストと効果を考慮した断熱・耐震リノベーション

オリナスでは、既存住宅の性能向上も重要な課題として捉えています。築年数の古い住宅の中には断熱性能や気密性能がほとんどない、いわば外部環境と変わらないような住宅も少なくありません。

岩前教授「既存住宅のリフォームでは、窓の断熱がとても重要です。暑さの73%、寒さの58%が窓から出入りしているため、内窓を設置して二重窓にすると快適性が大きく向上します。冷暖房の使用時間が大幅に減るので、無駄な光熱費もかかりません」

上野山「窓の断熱改修は効果が高く、国の補助金も活用できます。当社でも月に5件ほど実施しており、お客様からは劇的な変化を実感したという声をいただいています」

コマツ氏「窓リノベは毎日の暑さ寒さに直結するので、リフォーム費用もすぐにペイできますよね。一方で、耐震リフォームについては、まだハードルが高いという方が多いように感じます」

岩前教授「たしかに耐震改修は予算との兼ね合いが難しいですが、部分的な改修から始めることもできます。例えば、寝室だけでも地震対策しておけば、コストを抑えながら安心して過ごせます。リスクから目を背け続けるのではなく、まずはできるところから始めることが大切です」

上野山「当社では大規模なリノベーション時には耐震診断も行い、できる限り断熱と耐震の両面から性能向上を図っています。岩前先生のご指摘のように、お客様のニーズと予算に合わせて、段階的な改修プランも提案しているところです」

有田からはじまる、地域に根ざした住まいづくり

住宅性能の向上は多岐にわたるメリットがありますが、同時にコストも増加します。日本の気候は地域によって大きく異なるため、全国で画一的な高性能住宅を建てるのではなく、各地域の特性に合わせた家づくりが重要です。

岩前先生「地域の将来に寄与する家づくりができる会社こそが、これからの住宅業界のロールモデルになると考えています。その意味で、オリナスさんの『この地域で暮らすこたえがある』というキャッチフレーズは非常にすばらしいですよね」

上野山「ありがとうございます。最近では、別の仕事をしながら農業をやりたいという方や、空気の良いところで二拠点生活をしたいという方も増えています。こうした新しいライフスタイルのニーズにも、地域に根ざした家づくりで応えていきたいです」

オリナスでは、高品質な住宅を提供するとともに、地域のアイデンティティを守り、発展させることも重要な使命と捉えています。これからも、地域の活性化に寄与し、人々に愛され続ける住まいづくりに邁進してまいります。

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