吉例 顔見世興行

今月は歌舞伎についてお話しします。年の瀬が迫ると、京都の南座で恒例の「顔見世興行」が開かれます。南座の入り口に、出演役者の名前を墨書きした「招き」が掲げられるのは、京都の冬の風物詩としてニュースでも取り上げられます。

20代の思い出と「非日常」

20代の頃、歌舞伎好きの知人がいて、当時も入手困難だった顔見世のチケットを確保してくれたおかげで、仲間と毎年観に行くことができました。顔見世は、東西の有名俳優たちが一堂に会する豪華な舞台で、今振り返ると本当に貴重な経験をさせてもらったと感じています。開演前の劇場は、明るい照明に照らされた縦縞の幕、拍子木や三味線の音、日常から切り離された華やかでワクワクする特別な空間でした。

時代を超えて共感

セリフや仕草は昔のままなので、歌舞伎というと堅苦しくてとっつきにくいと感じる方も多いと思います。確かに古い言葉遣いは分かりにくいところもありますが、人間の感情は今も昔も変わらないもので、思わず笑ったり泣いたりしてしまいます。ノリのいいお囃子(はやし)では自然と体がリズムをとっています。幕間に、お弁当を持ち込んでビールやお酒を飲みながら食事をするのもちょっとした楽しみでした。昔の人は上手に遊んでいたんだなあと感心します。

一生の宝物

今年は映画「国宝」のヒットもあり若い人たちも歌舞伎の公演に足を運ぶようになったそうです。形式にこだわらず、非日常に心を躍らせる楽しみをもっと多くの人に味わって欲しいと思います。

3~40年前に活躍していた名優達は、ほとんど他界されてしまいましたが、その方々の生の演技を見ることができたという体験は正に私の宝物です。

 

-ORINAS MAGAZINE2025年1月号より-

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