変わりゆく住まいの理想像

昭和世代が憧れた「理想のマイホーム」

長年、新築やリフォームの仕事に携わっていると、住まいの流行が時代とともに移り変わってきたことを実感します。住まいは人々の生活に密接に関わるものであり、その時代の価値観やライフスタイルを映す鏡でもあります。そして、そうした変化の背景には常に「新しい暮らしへの憧れ」があるように思います。

私たち60〜70歳代の世代にとって、憧れの住まいといえば、二階建ての家、ベランダ、ドア、個室(子ども部屋)、出窓といった要素が挙げられます。

これらは、映画やテレビで見た西洋の暮らしに影響を受けたものであり、昭和の日本家屋に育った私たちには、それらがとても新鮮で輝いて見えました。実際にマイホームを建てるときには、積極的に取り入れてきたものです。

平成・令和世代に選ばれる住まいの特徴

しかし現在では、平成生まれの世代が新築住宅の主な住まい手となり、求められるスタイルも変わってきました。

高い断熱気密性能、平屋、引き戸、広いリビングなど、より機能的で現実的な暮らしを重視する傾向が強まっています。

ベランダや出窓は姿を消しつつあり、「西洋的なものへの憧れ」ではなく、「自分たちの生活に本当に合っているか」「将来も使いやすいか」といった視点で住まいを選ぶ時代になったといえます。

SNSが与える住まいの価値観への影響

さらに近年では、SNSやYouTubeで紹介される“映える”デザインの影響も大きくなっています。

まだ情報の質にはばらつきがあるものの、これがきっかけとなって日本人の感性を活かした、美しく快適な住まいが増えていくことを期待しています。

 

-ORINAS MAGAZINE2025年9月号より-

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